8May

感覚がどれほど大事かということを、大原先生が諭そうとしたテレフォン人生相談の回です。
私としては、未だかつてない素晴らしい回答の回、是非、お子さんをもつすべての親御さんにきいて欲しいと思います。
表面に出ているのは13歳の娘の夜尿症とオムツですが、それはたったの5%に過ぎません。
水面下にある95%へ切り込むのは例によって加藤諦三氏と大原先生ですけど、このお二人は表面的な話を聞く中で「核心まで」貫く洞察力があるんですよね。
一般の方が聞くと「回答になってないじゃん」と思われるかもしれないんですが、それはお二人が回答を端折る(編集される)から。
14分間という限られた時間の中での回答ですから、まだるっこしいやり取りを抜きにして核心を突くからです。
そうすると、一般の方はあまりにも唐突すぎて、話についてこれない。
だけど、まさしく大原先生が仰ったことが、この相談者の家庭の問題の核心です。
親に問題がなくて、子供に問題が出ることはまずありえないのは基本中の基本ですが、この相談者はそこも認めたくない。
娘は「夜尿症」という病気だから仕方がない、それは僕たちのせいじゃない、という認識を手放そうとしません。
加藤先生が「ロボット」「システム化」と仰るのですが、その通りだと、私も思います。
人間の赤ちゃんから幼児時代は、まだ脳がしっかりと発達しきっていませんから、この世界を「知的」に理解したり体験したりすることが出来ません。
幼児に理屈を言って聞かせても理解できないのは、まだ脳のその部分が発達しきっていないから。
それで、すべての人間は8~9歳になるまでは、この世界を「感覚」を通して理解して体験しているのです。
これ、ものすごく大事なことなのでよく覚えておいて欲しいと思います。
しっかりとした記憶や知的な理解はなくても、感覚で物事を覚えていく時期に、ちゃんとした「お世話」をされていないと、感覚が育たない。
大原先生が仰った「オムツが濡れたら取り替えるときに、ぬるま湯でキレイに拭いてあげたときの「さっぱり感」を覚えていく」って、その通りなんですよ。
すべての人間の根幹的なモチベーションは「快適さを求める」ことなんです。
- お腹が空けば満たされたいと思う
- オムツが濡れれば気持ち悪いから履き替えてサッパリしたいと思う
- キツイ衣服は気持ち悪いから、合う服を着て快適になりたいと思う
- 寒ければ辛いから温まりたいと思う
- 暑ければ辛いから、涼みたいと思う
- 痛ければ辛いから、手当をして痛みを緩和したいと思う
こうしたこと、すべてが「感覚」なんです。
極論を言えば、暴力をふるう、人を殺めるといったことですら、その根幹にある衝動は「気分良くなりたい」なのです。
なので、自分の身体が感じている快適さを、子供の頃にしっかりと味合わせてあげることが極めて重要。
オムツが濡れていれば放置せずにすぐに処置をして、「キレイにしましょうね、サッパリしましょうね」とお世話してあげることが、限りなく重要。
寒くて放置されていれば温めてあげる、暑すぎれば涼しくしてあげる、お腹が空けば満たしてあげる、感覚を大事にしてあげる。
なぜって、子供にとってそれが体験している世界のすべてだからです。
これがしっかりと満たされないままに育った人は、潜在意識の中に慢性的な不快感を抱えており、それが様々に歪んだ形で発露してきます。
ですから、この頃の親の責任は重大です。
それを、「ロボットのようにシステム化」してしまったこの家庭では、子供の快・不快に極めて鈍感な家庭なのです。
大原先生がいみじくも仰ったように、「カーテンを閉め切っていても平気な家庭」なんだろうと、私も感じました。
感覚の中でも大原先生の仰った「臭覚」はとくに重要です。
私は、雨上がりの街に漂う雨の残り香がとても好きなのですが、こういう感覚を大事に出来ることが、「魂と繋がる」上で最も重要なことなんですよ。
なぜなら、魂は常に「五感」を通して人間とコミュニケーションしているから。
「ふっ」「ふっ」と胸によぎる微かな感覚をキャッチできるだけの繊細なセンサーがあるかどうか。
タンポポの花の香、シロツメクサの花の香、チューリップの花の香、すべて違いますが、私は一瞬の間にすべて自分の体内に蘇らせることが出来ます。
この相談者の家庭のようながさつな家庭では、そうしたものが育たないと、加藤・大原両氏は言うわけです。
ただ、それは相談者が求めていた回答ではないために、相談者はまったくピンと来ていないし、納得もしていない。
もっとも、こうした家庭はとくに珍しくはありません。大体6割~7割くらいがこんな感じなんじゃないでしょうか。